初夏の青い空。 そんな空を見ると、ほんの少し、なんとも言えない切ない気持ちが湧いてくる。
真っ青の空を、一機の戦闘機が真っすぐ上昇していく。
まるでロケットのように、ぐんぐんと垂直に昇っていく。
距離が遠いため、音は聞こえない。
が、エンジンノズルから青く赤い炎が揺らめくのが見える。
そして、あっという間に機体は小さくなっていき、薄っすらとした飛行機雲だけを残して見えなくなってしまう。
初夏の真っ青の空を見ると、いつの間にかそんなシーンを自然と思い描いている。 それともに、ほんのひと雫くらいだが、心の底にぷかりと切ない気持ちが湧いて出てくる。
いつの頃から、そんな風になったのか、よく覚えていない。だが、自分が思い描くシーンには思い当たるものがあった。
正確には自分が思い描くようなシーンは登場しない。だが、このライトノベルを読んでしばらくしてから、初夏の空を見ると、そんなシーンを思い描くようになっていた。
名作なのか分からない。読み終えた直後には、強い感情の起伏は怒らず、切ない気持ちにもならなかった。
だが、読んでからもう十年以上経つのに、こうして初夏の澄み切った青い空をみると、なぜかちょっとだけ切ない気持ちになる。