電子探訪記

モンハン好きのおっさんが残すライフログ、読書・ゲームがメイン

ゲーム開発におけるユーザの期待値のコントロールについて

『Anthem』は、気になる作品だったので、ずっと追い続けていたけど、結局挽回できずに終わってしまったなぁと感想。

継続して改善していきますとコメントしているが、まぁ、主要な開発メンバーを次の『Dragon Age4』のチームに異動させてしまった時点で、もうBioWare社が『Anthem』を見切ってしまっているのは明らかなので、実質的にオワコンと化してしまっており、ここまま小規模のアップデートを何回かして、お茶を濁して、サービス終了する形しかないだろう。

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色々と失敗の理由が挙げられているけど、最大の要因は、ユーザが期待したクオリティと実際のゲームのクオリティの差が大きすぎたというのがあるのではないか。

Biowareの過去の実績と、EA傘下ということから、ユーザはAAAタイトルとして『Anthem』を見ていたし、当然それに相応しいクオリティを期待していた。メーカ側もその期待を煽るようなトレーラーを公開していた。


刺激的なトレーラーを公開して、ユーザの購買意欲を刺激することは別に悪いことではないし、ごく普通のことだが、あまりにも実態とかけ離れた過度の期待をユーザに与えるのは、諸刃の剣の面も多分にあるのが、今回の『Anthem』の件で明確になったのではないか。

これが名前も知られていないインディーズのゲーム会社であれば、評価は全然違っていたのではないか。これがAAAタイトルと認識されておらず、無名のゲームメーカが唐突に発売していたら、結構ヒット作になったのではないか。

色々と不具合や、作り込みが甘い点が多々あったが、それでもジャベリンで空を飛ぶのは気持ちよかったし、戦闘もボスキャラに辿り着くまでの道中の雑魚との戦闘などが冗長だったりして、AAAタイトルとしてはイマイチだったが、ゲーム自体はそれほど悪くはない印象だったし、時間を掛けてブラッシュアップしたら、名作になる潜在力は十分にある作品だった。

なので、ユーザが過度の期待をしておらず、無名の作品として評価されていたら、徐々に人気を勝ち得ていたかもしれない。少なくとも、今のように失敗作という烙印を押され、開発を縮小されるようなことはなかったと思う。(まだ『Anthem』をプレイし続けて、プレイヤーには申し訳ないが)

『Anthem』の真逆の方法で、大成功した『Apex Legends』

『Anthem』とは逆に、ユーザに事前情報を与えずに、いきなりクオリティの高いゲームを突き付けて、スタートダッシュに成功したのが、『Apex Legends』だった。

wired.jp

『Apex Legends』は本当に何も情報がないままで唐突にリリースされ、有名な配信者のプレイ実況によって、配信一週間で累計プレイヤー数が2500万人を超えるほどのスタートダッシュを見せた。

game.watch.impress.co.jp
熱狂というか、FPS、TPS界隈では、完全なお祭り騒ぎだった。『Fortnite』や『PUBG』にみんなが飽き始めていた時期で、タイミングも絶妙だったというのもあるが、事前情報が一切なかったことが、口コミで爆発的にプレイヤーが増えた最大の要因だった。
『Apex Legends』は本当にサプライズだった。しかも無料でクオリティが異様に高かったでの、期待値がほぼ0の状態だったユーザたちは、衝撃を受けて、『Apex Legends』にのめり込んだ。そして、わずか1週間で同時接続数200万という記録を叩き出す。

この辺は、同じEA傘下のゲーム会社であるのに、完全に真逆の方法で、真逆の結果が出ているのが面白く、興味深い。今後は『Apex Legends』のようにいい意味でユーザの期待を裏切る形のゲームが多くなるのかもしれないと思いつつも、『Apex Legends』は偶然の要素も多いので、真似するのは難しいかなとも思う。

その華麗なスタートダッシュを決めた『Apex Legends』も、リリースから1ヶ月が経つ頃からチータの蔓延に苦しみ、それが原因でプレイヤー数が頭打ちになってしまった。多分、それがなかったら、『Fortnite』を超えていたのではないか、と思わせるくらいのような勢いがあった。その勢いが、チータのせいで失われてしまった。この点はすごい残念だった。

ヒットするには驚きを与える

ヒットするには、単にクオリティが高いだけでなく、ユーザがイメージしている期待値以上の驚き、というかインパクトを与えないとならず、綺麗で迫力があるトレーラーとかを見せて、ユーザの期待を煽る手法は、SNSが極度に発達した現在では、逆効果の面も大きくなってきていると『Anthem』の一連の流れを見て感じた。コンセプトは良かったのに、本当にもったいなかった。

まぁ、完成度が高くない状態でリリースせざるを得ない状況に追い込まれている時点で、開発のマネージメントに失敗しているので、『Anthem』の今の流れは当然といえば当然の結果なのだろうけど…

今の時代、ゲームは大型タイトルだけでもいくつもあるので、まず存在を認知してもらうという意味では、宣伝は非常に大切ではあるのだろうが、今後は『Apex Legends』のようなサプライズ型のリリースは増えて行くのか。個人的には非常に注目している。

ただ、理想的なスタートダッシュを決めた『Apex Legends』もリリースから約半年経った現在では徐々にプレイヤー数が減りつつあり、ゲームの方向性をどうすれば良いか手探りしている印象があり、バトルロワイヤルのゲームの一角にはなれたが、なかなか難しい舵取りを迫られている状態にある。 ソロモードを期間限定で試験的に導入とのことだけど、チームプレイが特徴の一つだったのに、それをやめてしまうのは、方向性を見失って、迷走しつつある感じがする。

数ヶ月遅れてのアップデートだけど、多分、少しは盛り返すかもしれないけど、失敗したという評価を覆すまでには至らないではないか。頑張っては欲しいけど…